研究部会連合発表会優秀講演賞(2019年)

日本応用数理学会では、研究部会連合発表会の講演登壇者から優れた発表をした方を、「研究部会連合発表会優秀講演賞」受賞者として表彰しています。
2019年は、以下の方が受賞されました(敬称略、50音順)。
表彰式は、総会において行われます。

受賞者 受賞講演について
中務 佑治(なかつかさ ゆうじ)

(オックスフォード大学数学科・国立情報学研究所)

[講演題目]
  
対称行列の近似固有ベクトルと一般行列特異ベクトルのシャープな誤差評価

[講演概要]
  
近似固有ベクトルの誤差評価と摂動論は古典的で重要な問題であり、Davis-Kahanによる1970年の結果が知られており、固有ベクトルの条件数は1/gapと与えられる.本研究では、広く使われるRayleigh-Ritz法を用いて計算された固有ベクトルは、Davis-Kahanの評価よりも遥かに高い精度を持つことを証明した.同様の結果が一般の行列の特異ベクトルに対しても得られており、PCAや行列低ランク近似等への応用が期待される.

早水桃子(はやみず ももこ)

(情報・システム研究機構 統計数理研究所 モデリング研究系
科学技術振興機構(JST)さきがけ)

[講演題目]
  
Tree-based network の構造定理と系統樹推定に関する諸問題への応用

[講演概要]
  
系統樹の拡張版となるグラフのクラスを探求することは進化生物学の重要な課題である.近年の理論系統学ではtree-based network(TBN)がホットな話題だが,数学的には未解決問題が多く,応用可能性は未知だった.本講演では系統樹推定に係る諸問題(探索,数え上げ,列挙,最適化)を統一的に捉えるTBNの構造定理を証明し,各問題に対する線形時間(遅延)アルゴリズムを与え,統計学的な応用も開拓した.

町田 学(まちだ まなぶ)

(浜松医科大学フォトニクス医学研究部)

[講演題目]
  
解析解に基づく輻射輸送方程式の数値計算

[講演概要]
  
輻射輸送方程式は線形ボルツマン方程式であり、微分項の他に積分項を含む。生体組織中の近赤外光伝播をはじめ、地球物理、宇宙物理、原子炉工学など、様々な場面で登場する。輻射輸送方程式の新しい数値計算手法を提案した。1次元の場合に知られている特異固有関数の多次元への拡張は半世紀来の懸案であったが、この3次元版を得た。これを用いて解を展開する。3次元特異固有関数の直交関係を利用して、3次元FN法を開発した。