論文賞, ベストオーサー賞 2019年度
(著者の所属は論文発表時のもの)
論文賞 | ||
理論部門 | [論文]
グラスマン多様体上の商構造を用いたニュートン法 [著者] 佐藤 寛之, 相原 研輔 [受賞理由] 数理最適化は科学・工学における普遍的ツールであり,古くから制約や凸性の |
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ノート部門 | [論文]
CGS 系統の反復法に対する近似解精度の改善に向けたスムージング技術の再考 [著者] 米山 涼介, 相原 研輔, 石渡 恵美子 [受賞理由] 非対称行列を係数とする連立1 次方程式向けに広く使われている反復解法とし |
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サーベイ部門 | [論文]
リフティングスキームによるウェーブレットの構成法 [著者] 藤ノ木 健介 [受賞理由] リフティングスキームは,スプリット,予測,更新,スケーリングの4つのス |
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JSIAM Letters部門 | [論文]
H2 gradient method for the coefficient identification problem in a partial differential [著者] Daisuke Kurashiki, Kenji Shirota [受賞理由] 本論文は,コンクリート梁と鉄梁の結合部におけるせん断剛性係数関数を観測データから復元することで,劣化した連結部材の位置と劣化率の同定を試みている.この問題は,波動方程式族の係数同定逆問題一つであり,その非適切性に由来する数値不安定性への対処が不可欠となる.著者らは,問題の性質から起因する正則性の要請から,これまで知られてきたH1 勾配法を拡張した H2 勾配法とよぶ新しい解法を開発した.筆者らの手法は,係数同定逆問題のみならず,様々な逆問題へ適用可能であり,その分野に大きく寄与することが期待される.以上により,本論文が日本応用数理学会論文賞(JSIAM Letters 部門)にふさわしいものと評価する. |
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JSIAM Letters部門 | [論文]
Shape optimization for a linear elastic fish robot [著者] Wares Chancharoen and Hideyuki Azegami [受賞理由] 魚類の泳ぎ運動の解析は,Lighthill(1960) の研究以来多くの研究者らによって取り組まれてきた.この論文では,線形弾性体の内部に発生する振動モードを,泳ぎモードに近づけるような形状最適化問題を定式化し,その解を用いることによって連続的な泳ぎ運動が実現できるかという課題に取り組んでいる.評価関数には,既知の泳ぎモードと線形弾性体の周波数応答変位の2 乗ノルムが採用され,解法には,著者らが開発してきた勾配法に基づく反復法が用いられた.数値解析によって,この手法が実際に機能することを確認している.手際よくまとめられた,この研究課題に対する第一歩として重要な貢献をなしていると判断できる.以上により,論文賞選考委員会は,この論文が日本応用数理学会論文賞(JSIAM Letters 部門)にふさわしいものと評価する. |
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JJIAM部門 | [論文]
A genuinely stable Lagrange–Galerkin scheme for convection-diffusion problems [著者] Masahisa Tabata and Shinya Uchiumi [受賞理由] |
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JJIAM部門 | [論文]
Accelerated proximal gradient method for elastoplastic analysis with von Mises yield criterion [著者] Wataru Shimizu and Yoshihiro Kanno [受賞理由] |
ベストオーサー賞 | |
論文部門 | [論文]
ベイズ法を用いた高次元テンソル推定 [著者] 鈴木 大慈(東京大学大学院情報理工学系研究科) [受賞理由] 異質なデータを組み合わせて予測や情報抽出をする場合にはテンソルモデルが自然と立ち現れる.通常の回帰分析を単一の特徴量ベクトルの線形変換が目的変数を生むという定式化とすれば,特徴量が複数になった場合の拡張と見ることができる.主成分分析などではデータ群をうまく表現できる少数の基底ベクトルの推定が中心的課題となるが,テンソルモデルにおいても「低ランク性」をうまく利用することがデータ解析の鍵となる.本稿は,その実現方法としてベイズ法を選び,定式化から予測性能の理論的よび実測評価までを解説している.凸最適化や交互最小二乗法に比して少ない仮定で統計的最適性を理論的に保証できることにベイズ法の利点がある.幅広く渉猟した文献に裏付けられた本稿は応用数理に携わる研究者・実務家にとって有益な情報が凝縮されているとの点からベストオーサー賞にふさわしいと評価した. |
インダストリアルマテリアルズ部門 | [論文]
折紙の数理を応用したハニカム構造材料の新しい製造法 [著者] 斉藤 一哉(東京大学大学院情報理工学系研究科),五島 庸(城山工業株式会社),王 麗君(東京大学生産技術研究所),岡部 洋二(東京大学生産技術研究所) [受賞理由] 近年,3D プリンタ同様に高い造形性を有する技術として折紙が注目されており,平面から折り曲げただけで様々な立体を創造する折紙の手法を数理的に洗練し,製造加工技術と融合させることで新しいものづくりが可能になると期待されている.そのためには,コンピュータ折紙等で得られた複雑な折線パターンを自由に立体化する技術を目指すトップダウン的な研究開発と並行して,既存の製造加工技術で製作可能な折線パターンの範囲で形や機能を生み出すボトムアップ的な試みが必要である.本論文ではボトムアップの部分を扱っており,著者らによる,周期的な折線・スリットを入れたシートから折紙のようにセル構造体を立体化する手法,とくに任意の断面形状をもつハニカム構造体の展開図設計手法と,製造装置への実装に関して述べている.さらに,提案手法で製作された試作品についても触れるなど,数理的な内容と実際のものづくりへの挑戦をバランスよく記述している.以上により,ベストオーサー賞選考委員会は,本論文が日本応用数理学会ベストオーサー賞にふさわしいと評価した. |