第10回業績賞(2020年度)

分類A. 理論を重点とするもの: 1件
[受賞者]
西浦廉政(北海道大学名誉教授)

[題目]
「非線形・非平衡現象におけるパターン形成の数理科学研究とその応用」

[業績概要]
西浦廉政氏は数学・応用数学・非線形物理学・材料科学などの非常に幅広い分野の研究に取り組み,厳密な非線形偏微分方程式の数学解析研究はもちろん,複雑現象の理解に資する数値計算と解析のハイブリッドな方法などを用いた応用数理的な研究,さらには研究成果を自然現象記述のための一般概念として確立・提唱するなど,単一の分野にとどまらない顕著な研究成果を挙げている.
西浦氏の研究業績は生命現象,化学反応,数理生態学,非線形物理学に現れるパターン形成の研究を通して,偏微分方程式論や力学系理論を用いた数学研究による厳密な数理的理解と数値シミュレーションを併用した理論研究を推進し,これら非線型・非平衡現象における散逸構造の基本原理を数理科学の言葉として精緻に概念化することに成功したものである.さらに,ここで得た知見を背景にして,より複雑な研究対象である材料科学分野の研究にも取り組んできた.このように,同氏は多彩な非線形・非平衡現象に現れる反応拡散系方程式の数学解析,パターンダイナミクスの数理,材料科学分野への応用研究のいずれの分野においても顕著な研究業績を挙げており,科学技術の多方面に影響力のある数理科学者として分野を超えてインパクトをもたらしてきた.
また,西浦氏は広島大学,北海道大学,東北大学の各教授を歴任し,数学・応用数学の次世代を担う研究者の育成に尽力してきた.数理科学研究者だけにとどまらず,国内外の様々な分野の若手研究者との共同研究など研究の裾野の発展も強力に推し進め,同氏の研究成果は分野を超えて物理学,化学,生命科学などの広く周辺諸分野の研究者へと広がり,各分野の研究に与えた波及効果は大きい.
このような西浦氏の研究と諸活動の実績は日本応用数理学会業績賞を贈るに相応しいものとして高く評価されるべきものである.

分類B. 応用を重点とするもの: 該当無し