受賞者 |
受賞講演について |
垣村 尚徳
(東京大学大学院情報理工学系研究科)
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[講演題目]
指定された頂点を通るパリティ制約付サイクルのパッキング
[講演概要]
グラフにおいてサイクルを互いに交わらないように詰め込む問題はグラフ理論における基本的な問題であり,その古典的な結果としてErdös–Pósa性が成り立つことが知られている.
本研究では,サイクル詰め込み問題を一般化し,長さにパリティ制約があり,かつ指定された頂点集合を通るサイクルのみを詰め込む問題に対して,Erdös–Pósa性が成り立つことを示した.
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柏原 崇人
(東京大学大学院数理科学研究科)
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[講演題目]
L1(a, b) ノルムの数値計算に対する注意とその応用について
[講演概要]
一次元区間上の積分に対しては多くの数値積分公式が知られており,被積分関数が滑らかならば誤差の振る舞いも既知である.
しかし関数の L1ノルムを数値計算する際は,絶対値関数が原点で微分不可能なことが悪影響を与える可能性がある.
本講演では誤差の振る舞いが悪化する例を報告した.
誤差の悪化を防ぐための対処法を提案し,実際に改善されることを検証した.
L1ノルムの数値計算が現れる問題への応用例も示した.
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齋藤 卓
(大阪大学大学院基礎工学研究科)
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[講演題目]
A Mathematical Approach to Find Roles of Csk binding protein in Controlling the Oncogenic Potential of c-Src
[講演概要]
c-Srcは世界で初めて発見されたがん遺伝子であり,Src形質転換と呼ばれるがんの悪性化を導く分子である.
本研究では,実験での報告を基にCbpによるSrc形質転換抑制機構の数理モデル化を行った.
本研究により,脂質ラフトによる細胞膜コンパートメント化が引き起こす分子の空間的局在化を介して,Cbpが競合阻害剤の役割をすることがわかった.
更に,ラフトとCbpによる抑制に相乗効果があることを示し,実験に対する示唆を与えた .
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新納 和樹
(京都大学大学院情報学研究科)
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[講演題目]
Helmholtz 方程式に対する周期高速多重極境界要素法のAnomaly 周辺における収束性の改善について
[講演概要]
周期多重極法は周期境界値問題の高速な数値解法として強力な手法であるが,この解法で得られる線形方程式を反復法で解く際,前処理によって解法の更なる高速化が実現できる.
本講演では,Helmholtz方程式の周期境界値問題に対するCalderonの式に基づく前処理による解法の高速化について述べた.
特に反復回数が著しく増大するAnomaly周辺においてもこの前処理が効果的であることを示した.
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米山 一樹
(NTT情報流通プラットフォーム研究所)
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[講演題目]
途中計算情報の漏洩に対する認証鍵交換プロトコルの安全性考察
[講演概要]
認証鍵交換プロトコルSMQVは途中計算情報の漏洩に対しても安全であると主張されているが,本研究では,安全性証明の誤りを指摘し,同一の数学的仮定の下では証明をrepairすることが困難であることを示した.
また,従来のDiffie-Hellman型認証鍵交換プロトコルを途中計算情報漏洩に対して達成可能な安全性レベルごとに分類し,(現状では)そのような漏洩に対して安全な方式が存在しないことを示した.
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