第3回 若手優秀講演賞 (2006年度)

受賞者 受賞講演について
相島 健助
(東京大学大学院院情報理工学研究科)
[講演題目]
  
特異値計算のためのdqds法の収束性について

[講演概要]
  
行列の特異値計算のための高速高精度なアルゴリズムとしてdqds法とmdLVs法がある.
両アルゴリズムは反復法における変数の収束先から特異値を計算しているが,dqds法はシフトを行わない場合のみ,mdLVs法はシフトがある条件を満たす場合に,収束が保証されていた.
本講演では,より一般的なシフトで収束が保証されることを示し,さらに,シフト量をJohnson下界に基づいて決定する場合に,収束次数が1.5次となることを示した.

竹内 謙善
(株式会社くいんと)
[講演題目]
  
固有振動数に基づく形状同定解析

[講演概要]
  
製品開発の現場では,実製品の固有振動数に一致するように有限要素モデルの形状を同定したいという要求がある.
本研究ではその形状同定問題を,固有振動数を制約関数とする多制約形状最適化問題として定式化した.
また,定式化された最適化問題に対して力法に基づく形状修正法とラグランジュ乗数法を適用し,実用的な解法を示した.
数値解析例として自動車のブレーキ部品の事例を示し,その解法の有効性を検討した.

田中 健一郎
(東京大学大学院情報理工学研究科)
[講演題目]
  
Gauss核サンプリング公式の複素関数論による誤差評価

[講演概要]
  
Sinc関数とGaussの誤差関数を用いたサンプリング公式に対し,Qian等は最近,Fourier解析を用いて,帯域制限された関数に対する誤差評価を与えた.
これに対し我々は,複素解析を用いて,実軸上で非有界な関数を含む,より広い範囲の関数に対する誤差評価を与えた.
Qian等の結果の一部は,我々の結果から系として導かれる.本講演では以上の結果を数値実験結果と共に報告した.(本講演は東京大学杉原正顯教授,室田一雄教授との共著講演であ
る.)

室谷 浩平
(東洋大学計算力学研究センター)
[講演題目]
  
拡張SSA法を用いた画像のノイズ除去法

[講演概要]
  
特異値分解を用いて画像のノイズを除去する方法がある.
これは,画像のピクセルの値を行列の要素にして,特異値分解を行うことによって,画像のスペクトル分解を実現して,大まかな部分と詳細な部分に分離し,詳細な部分をノイズとみなし除去する方法である.
SVDより一般化したデーター構造を扱うことができるように拡張した拡張SSA(Generalized Singular Spectrum Analysis)がある.
本論文では,この拡張SSAを用いた画像のノイズ除去法を提案する.

山下 真理子
(防衛大学校理工学研究科)
[講演題目]
  
空気抵抗が速度の2乗に比例する場合の放物運動の解析解とその性質

[講演概要]
  
物体に速度の2乗に比例する空気抵抗がかかる場合の2次元放物運動について考える.
この問題は運動方程式の非線形性により解析的に解くことは不可能であるとされてきた.
ただし,投射角が小さい場合については近似解が存在する.
本研究ではこの問題に対して,Liaoによって提唱されている新しい解析法である「ホモトピー解析法」を適用し,投射角が大きい場合にも有効な解析解を求め,その性質について調べる.

渡辺 曜大
(国立情報学研究所)
[講演題目]
  
パラメータ空間の幾何構造を考慮した確率推論アルゴリズム

[講演概要]
  
ベイジアンネットワーク上の確率推論に関して,周辺事後分布からなる統計多様体を導入し,その上の情報計量を用いて次の性質を持つコスト関数を構成した.

(1)確率伝播アルゴリズムの停留点において最小値をとる,
(2)収束点の近くで相対エントロピーに漸近する,
(3)アルゴリズムの収束点を知らなくても値を計算できる.
このコスト関数を用いて周辺事後分布の空間において超一次収束する推論アルゴリズムを構成した.